[マテリアルデータ]
FEMAPでは要素に物性値を付加してニュートラルファイルをソルバに出力できるが、PIEZO Plusでは、この中で材料番号・材料名しか使用せず、解析実行パラメータの材料データフォーム(下図)で設定したものを使用する。

このレポートで扱う材料は弾性体のみであるので、フォームに入力する必要があるのは、密度とヤング率、ポアソン比のみである。
しかし、実際に使われる材料のヤング率とポアソン比の値は入手しがたく、文献によっても異なる値が提示されているのが普通である。引張試験等による実測は行わず、ASMによるものを主に採用した。機械減衰(内部損失)を考慮した解析もできるが、この値を入手するのはさらに困難である。減衰係数が入手できた材料で減衰あり・なしの解析結果の比較を行ってみたが有意の差は無いようであった。
また、金属材料の弾性係数は温度に依存して変化(高温になると低く=柔らかくなる)。溶着で用いる場合には、振動子や作業部の発熱により共振材料の温度は高くなる。このレポートではこれを一切考慮せず、すべて「常温」での解析結果を提示する。
[線形解析に必要な基礎的な式と用語]
弾性体においては、材料の密度[kg/m^3]と弾性係数E[N/m^2] 、音速(振動伝達速度)[m/s]の間に下式のような関係がある。
音速 = SQRT( E / 密度 )
振動の1波長の長さ[m]と音速[m/s]、周波数[1/s]の関係は下式のとおり。
波長 = 音速 / 周波数
ここから、以下の式が得られる。
長さL[m]を1波長とする周波数 = 音速 / L
縦弾性係数Eは英語では、"Modulus of elasticity" とか "Young's Modulus" と呼ばれ、以下で定義される。σは応力値、εは歪み量でで無次元数である。従ってEは応力と同じ単位を持つ。式でわかるとおり、材料に一定の歪み(のびや縮み)を与えるために必要な応力値であり、材料の剛性(変形のしにくさ)を表す。
E = σ / ε
横(せん断)弾性係数:Gとポアソン比:v、縦弾性係数:Eの間には以下の関係がある。
v = E / ( 2 * G ) - 1
つまり、3つの値のうち2つがわかれば、残りを算出できる。
[ここでの解析に用いたマテリアルデータ(物性値)]
プラスティック溶着用超音波振動系でよく使われる材料は64Ti(6%Al,4%バナジウム)、5000/7000番台のアルミ、ベリリウム銅、ステンレスなどである。以下のASMによる値を用いた。
| JIS 記号 | AISI(SAE) 記号 |
密度[*10^3kg/m^3] | E[GPa] | ポアソン 比 | 音速 [m/s] |
| Ti-6Al-4V | ASTM-B348 | 4.43 | 113.8 | 0.342 | 5068 |
| A2024 | 2024 | 2.77 | 72.4 | 0.33 | 5112 |
| A5052 | 5052 | 2.68 | 69.3 | 0.33 | 5085 |
| A5056 | 5056 | 2.64 | 71.7 | 0.33 | 5211 |
| A7075 | 7075 | 2.8 | 71 | 0.33 | 5036 |
| C1700 | C17000 | 8.41 | 131 | 0.15 | 3947 |
| SUS304 | 304 | 8 | 193 | 4912 | |
| SUS440C | 440C | 7.8 | 200 | 5064 |
注:)単位に関して [GPa]=10^9[Pa] = 10^9 [N/m^2] = 10^9 [(kg m/s^2) /m^2] = 10^9[kg/(m*s^2)] なので、E/密度 の単位は、[m^2 /s^2] となる。
この物性値から、20/30/40kHzにおける波長および半波長の長さを計算すると以下のようになる。振動系の各部品の長さをそれぞれの周波数においてこれらの値にあわせることで共振させることができる。(縦振動の場合)
| JIS 記号 | 40KHzでの 波長 [mm] | 40KHzでの 半 波長 [mm] | 30KHzでの 波長 [mm] | 30KHzでの 半 波長 [mm] | 20KHzでの 波長 [mm] | 20KHzでの 半 波長 [mm] |
| Ti-6Al-4V | 126.7 | 63.4 | 168.9 | 84.5 | 253.4 | 126.7 |
| A2024 | 127.8 | 63.9 | 170.4 | 85.2 | 255.6 | 127.8 |
| A5052 | 127.1 | 63.6 | 169.5 | 84.8 | 254.3 | 127.1 |
| A5056 | 130.3 | 65.1 | 173.7 | 86.9 | 260.6 | 130.3 |
| A7075 | 125.9 | 62.9 | 167.9 | 83.9 | 251.8 | 125.9 |
| C1700 | 98.7 | 49.3 | 131.6 | 65.8 | 197.3 | 98.7 |
| SUS304 | 122.8 | 61.4 | 163.7 | 81.9 | 245.6 | 122.8 |
| SUS440C | 126.6 | 63.3 | 168.8 | 84.4 | 253.2 | 126.6 |
Ti-6Al-4V,A5056とSUS304について、1波長共振周波数と共振体の長さの関係をグラフ化すると以下のようになる。
